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クボリカワ書房 徳島駅前支店

BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコと+Plus編集長岡本友吟が
少女漫画をそれぞれの目線で語る乙女企画!!
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第5回 うさぎドロップ
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    第5回 うさぎドロップ 
    宇仁田ゆみ著 (祥伝社 / FEEL YOUNG 2005年〜連載中 / 既刊5巻)


    あらすじ :
    亡くなった祖父の隠し子、リンを引き取ることになった独身サラリーマン大吉が、6歳の女の子の子育てと仕事との両立に右往左往しながらも、「家族」の信頼関係を深めていく物語。


    「どんな状況だろうがそこで幸せなものが生まれればいい」

    クボタマサヒコ(以下クボタ)「今日は大阪にてsoulkids(※1)とkuh(※2)のライブがありまして、その打ち上げ会場にて収録しています」

    岡本友吟(以下ユウ)「そして音人フォーラム特集ということで、ismをゲストに迎えてお送りします。ismは漫画はジャンル問わず色々読んでるそうなんですが、今回紹介する『うさぎドロップ』にも詳しいんですよね」

    ism「待望の宇仁田ゆみ(※3)の登場ですね」

    クボタ「ism的にそうなんだ?」

    ism「この人程、過小評価されてる人はいないですね」

    クボタ「作家歴は長いの?」

    ism「僕が最初に読んだのはIKKI(※4)で連載されてた『スキマスキ(※5)』。そこから気になって過去の単行本も買って… スキマスキは隙間が大好きな男の子が隣のアパートに住む女の子のカーテンがいつも少し空いててチラッと見えるその子に恋をしてその距離をだんだん埋めていくって話なんだけど、実はお互い覗き合っていたっていう、ちょっと気持ち悪そうな話なのにむちゃくちゃ軽いノリで書いてるところが面白かった」

    クボタ「面白そう! でもこの『うさぎドロップ』とはまた違う作風だね」

    ユウ「単行本は短篇が多いみたいだけど、これ初めてなのかな? 長編って」

    ism「いや、『トリバコハウス(※6)』って全2巻のがあって、『うさぎ〜』と平行して連載してた『よにんぐらし』は全4巻まである」

    クボタ「詳しいなぁ(笑)」

    ism「『よにんぐらし(※7)』も家族の話です」

    ユウ「『うさぎ〜』ってフィールヤング連載だから、南Q太(※8)とか魚喃キリコ(※9)とかね、そういうちょっと陰な感じなのかなと思ったら全然違うからビックリした」

    ism「ドロっとしたところを一切感じさせない安心感がありますよね。嫌な現実とか、ちょっと重たい話も無視はしないけどそこまで暗く捉えない」

    クボタ「気の持ちようでは乗り越えられるように描いてるよね」

    ism「普通に重たい話ってなんとなく日常にもあるし、それに対していちいち深く傷ついてたらキリがないし結構そんなもんじゃない? ってノリで、過剰に表現しないからいい」

    クボタ「変にオシャレ・テイストっていうのでもないもんね。俺は少女漫画買う時って物語はもちろんだけど、やっぱり絵が好きかどうかが重要なんだよね。最初本屋で1巻見て、決して絵が上手いってタイプじゃないし… でも読まなきゃ判らん! と思ってまとめ買いして、そしたらもう… 読み始めたら止まらなくて。今になったらりん(※10)とかすげー可愛いいし」

    ユウ「りんちゃん可愛いですよねー」

    クボタ「これ、『千と千尋(※11)』手法と同じで、あの映画って最初可愛く描いてないんだよね千尋を。話が進むにつれだんだん目が大きくなって光の数とか増えたりしてすごく魅力的になっていって。りんも最初しゃべらないし無表情でしょ?」

    ism「表情が豊かになっていく過程がちゃんと描かれてますよね」

    ユウ「私独身なので子育てってこんな感じかなーって思いましたね」

    ism「りんと大吉(※12)はものすごい特殊な関係やけど、こういう家族っていいなあって思うよね」

    クボタ「そうなんだよね、何でこういう設定にしたのかな? 例えば結婚はしてないけど元彼女の子供とかでもいいのに、あえて自分にとって一切受け入れる義務のない子供を引き取るっていうさ。“じ、祖父ちゃんの隠し子?! ええーっ?!”みたいな(笑)」

    ism「6歳の子供だけどお祖父ちゃんの子供=自分のお母さんの異母姉妹、つまり自分のおばさんにあたる」

    ユウ「これね、りんの母親の事を誰も知らされてなくて、母親探しをするでしょ? あの辺の突き止めていく感じがすごいミステリー的で面白かった。りんを捨てた(?)母親はどういう人なんだろうって大吉と一緒にヒヤヒヤして、感情移入するにはすごく大事なところだったんだと思う」

    クボタ「自分的にあの母親は唯一リアリティがなかったなぁ。彼氏の設定とかも別にああじゃなくてもいいと思うし、いなくてもいいじゃんって思った。これからの伏線なのかもしれないけど」

    ユウ「でもあれはたぶん、女っていうのは結構簡単に新しい彼氏がいたりするもんですよ、っていうリアリティだと思うんですよね」

    ism「そうそう、宇仁田さんは女性なのに基本男性目線で描いてるけどキャラクターの中に女性っぽさを散りばめてくるんですよ」

    ユウ「男性から見て大吉の心理は共感できたりしますか?」

    クボタ「より“男子感”がデフォルメされてはいるけど、リアルだと思う」

    ユウ「私は大吉がすごく魅力的で、かっこいい男性像だ! って思ったんですが」

    ism「あれはでも完全に“勢い”ですよね、りんを引き取ったのは」

    クボタ「ね。たぶん大吉は元々は“いいヤツでしっかりした人”ではなかったと思うよ。りんと出会ったことでだんだん大吉の大人としての自我が芽生えたと思う。男としてか、父親としてなのかは判らないけど」

    ism「それをきっかけに自分の人生も深く考えていくようになっていく」

    ユウ「なるほど。大吉の成長物語でもあるんですね。
    4巻でりんが風邪を引いたとき“(風邪を引いたのが)なんで俺じゃなかったんだろう、替わってやりたい”ってありますよね? これは恋人に対してはそうは思わないはず。大吉が親としての愛情と責任を自覚してる象徴的なシーンですよね」

    ism「例えば母親がいたら男親は子育てにあまり関与しないでっていうのがまあ普通とされていて、イメージする父親より父親らしいよね。結果的に理想の父親像になってる。大吉は父親の自覚ないつもりだけど」

    クボタ「普通に結婚してて嫁がいたらこうはなってなかったかもね」

    ism「人間関係って単に人間性だけで関係が決まるんじゃなくていろんな状況とか出会い方で決まってくる。けどその都度ベストを尽くせば良い方向に行くし、いいサイクルができてくる」

    ユウ「みんな同じ道を歩いてて繋がってたんだ、ってシーンありましたね」


    クボタ「印象的なのは大吉がりんの写メールを見て“これってやっぱり犠牲とかと違うよな〜”ってところ」

    ユウ「ああーいいですよね。大吉は“子供を育てる事を自分を犠牲にしてるって思いたくないって”思ってて、2話目で“犠牲じゃないって言い切るのは嘘くせーから、何年か後にそう思えたらいいな”って言ってるんですよ。そして4巻で、りんの同級生のお父さん、お母さんと知り合った事や、色んな事を分かっていく内に“やっぱ違うよな”って、でも言い切らないんですけどね」

    ism「そのぐらいがいいんですよ」

    クボタ「そう。悪くないな、くらいのね」

    ism「宇仁田作品はハッピーエンドじゃないけどバッドエンドでもないオチの付け方をいつもしてくれる。こういうサブカルなのって“バッドエンドの美学”だったり問題定義して自分で考えろ、で終わるものも多いけど、僕も高校〜20歳くらいの時まではそういうのがかっこいいって思ってた時期もあったけど… 自分に浸るっていうかね、悲劇のヒーロー的な… でもだんだんどうでもよくなってくる(笑)そういう20代中盤以降の人にはすごくちょうどいい漫画」

    クボタ「音楽に対してもそうだよね。kuhで書く詞とかも断定はしないで曖昧さやどうとでもとれるようなものだし、バッドエンディングがかっこいいみたいなのを経て、やっぱり自然にハッピーって思えるのがいいじゃん、って事を今日soulkidsのライブを見て改めて感じたし。根拠のない若者の言う“イエイ!”っていうんじゃなくて、酸いも甘いもを経てsoulkidsがやってるのは押し付けがましくない“みんな楽しもうよ”って気持ちなのかな、と」

    ism「ベタだけど等身大っていうか、自分に出来ないことしか出来ない、けど出来る中でより良くする。そういう中で生きてる毎日は他の人と比べてどうとか関係ない」

    クボタ「だから大吉がやってることもそうだよね。通勤の時間の関係で保育所は選んだけど仕事はりんに合わせて定時で帰れる部署に変えてもらって。AかBか選んでるだけの話だもんね」

    ユウ「4巻で会社だけじゃなくて子育てしてるお父さんお母さんにもいろんな人がいるんだなあと感じて“就職したときは世界が広がった気がしたけど、ある意味こっちの方が広いかも”という場面。これは印象的でしたね」

    ism「もっと言えばこっちとそっちの差はあんまりないよ。まあ僕はそっち側は経験してないけど(笑)」

    クボタ「3人共ね(笑)」

    ユウ「会社・組織は自分がいなくても動いていく、でもりんの事はそうはいかん、…と思う、…って言ってる(笑)」

    ism「けどそれを選んだ事で新しい職場のヤンキーみたいなバイトとか同じ境遇の仲間ができて、学校でもパパ友や、そこでも新しい広がりはできていて、結局世界は広がってるからマイナスの選択はないよね」

    クボタ「俺、弟がいて昔一緒に音楽やってたりしたんだけどある時から辞めて結婚して子供作って、結局自分だけこの世界にまだ残ってて、それで思うのは弟が知らない世界を俺は見てるけど、俺が知らない世界を弟は見てるんだなってこと」

    ism「音楽やってる人って何か他の人と違うことをしたいと思ってるだろうし、例えば就職とかで音楽をやめていく人達を見て悲しい気持ちになったり、自分はそうはなりたくないって思ったり、悪く言えば“普通にはなりたくない”みたいなのはあったと思うし、今も無くはないけど、けどそうなってみたときに“悪くないものなのかな”ってこれ読んだら思ったし、辞めてった友達に会って、仲良く家族と週末過ごすって良さもあるんだろうなって、なんとなく気付いてきた」

    ユウ「それぞれどんな世界もね、一生懸命やってればつまんないことなんてないと思いますね」

    ism「『うさぎ〜』は全然抑揚のないすごく普通の日常なんだけど、僕から見るとすごく眩しい」

    ユウ「作風は派手に見せてないけど出来事ってやっぱりドラマチックですよね」

    クボタ「大吉はクールではないよね。あの、変なギャルが言い寄ってくる話がさ…」

    ユウ「あー! あれ面白かった!!」

    ism「あのくだり、普通の漫画だったら全部省くよね(笑)」

    クボタ「そう! あれ要らないよね(笑)」

    ism「けどそういう要らない部分が意外と利いてて雰囲気を作ってるんですよ。DSでマリオやってるとこでも、大吉はマリオの事を“一機二機”、りんの友達のコウキ(※13)は“一匹二匹”って言うんだけどりんは女の子だから“一人二人”って言うんだよね(笑)これも要らないエピソードだけど」

    クボタ「わかる!」

    ユウ「私そこ全然引っかからなかった! それって男目線なのかなあ」

    ism「コウキの小学生っぷりがいいよ。“新幹線が運行します”を“うんこします”とか言って喜んでるところとか、書かなくていい! けどそこがいい(笑)」

    クボタ「そもそも大吉も小学生みたいだし、この二人の関係性もいいよね」

    ユウ「そうそう、大吉言ってましたね、自分が昔やってたことをコウキに怒ってる自分がおかしいって(笑)」


    ism「映画とかドラマとかストーリーのために省きがちなものをきちんと書いてくれるいい作家じゃないかなと思う」

    ユウ「ちゃんと染み込んでくるもんね、“泣かせよう”じゃなくて」

    クボタ「真っ当に結婚して子供産んで育てるっていうのが幸せの真骨頂みたいに一応なってるじゃないですか世の中。これ読んで、でもそうでもないなっていうのが解った。そういう流れも幸せかもしれないけど、誰かのために生きる事… 大げさじゃなくね。そんな大吉の姿を見て、どんな状況だろうがそこで幸せなものが生まれればいい。そういう幸せのカタチを改めて思った作品でしたね」




    (※1)soulkids…名古屋在住のオルタナボーイズ、ソウルキッズ。5月20日にアルバムを発表したばかり。(※2)kuh…クボタマサヒコがメインソングライターとしてボーカル&ギターを務める(※3)宇仁田ゆみ…98年「VOICE」 (白泉社ヤングアニマル)でデビュー。著作多数。二児の母親でもある(※4)『月刊IKKI』…小学館から発行されている月刊漫画雑誌。マニア好みの漫画が多い。(※5)スキマスキ IKKI COMICS、2003年。(※6)トリバコハウス…祥伝社フィールコミックス全2巻2004年。年上の彼に依存し、なんでも言いなりの7年間、カゴから抜け出て窓を開けて待ち受けていたのは、ドラバタ雑居ライフ!(※7)よにんぐらし…竹書房バンブーコミックス全4巻2005年。きっと家族が欲しくなる!!宇仁田ゆみ珠玉のファミリーショートストリーズ!(※8)南Q太…漫画家。1992年アフタヌーン四季賞にてデビュー。(※9)魚喃キリコ…漫画家 。1993年 「 ガロ 」でデビュー。 南Q太共に自らの体験などをベースに、主に若い男女の恋愛模様を描いている。(※10)りん…鹿賀りん。鹿賀宋一と吉井正子の娘であり、ダイキチの血縁関係上の叔母。6歳。(※11)『千と千尋の神隠し 』… 宮崎駿監督によるスタジオジブリの長編アニメーション。2001年7月20日日本公開。(※12)河地大吉…「うさぎドロップ」の主人公。子供と女が大の苦手。若かりし日の鹿賀宋一と瓜二つであるため、りんにはよく懐かれている。(※13)コウキ…二谷コウキ。りんの幼馴染の男の子。保育園からの付き合いであり、小学校もりんと同じところに通っている。



    ism(イズム)…
    徳島発センチメンタルロックバンド『mule』、五感刺激楽団『NAMiDA』の首謀者にしてソングライター。またライブハウス『CROWBAR』ではブッキング担当としてシーンを支える。あらゆる媒体のディレクション、企画、デザインも手がけるプロデューサー気質のアイディアマンでもある。ロマンティックな前髪がトレードマーク。
    NAMiDA web…www.namida.biz
    | +Plus本誌 | 05:03 | comments(1) | - | - | - |
    いつも楽しみに読んでいます。

    うさぎドロップ前から気になっていた作品なので早速本屋さんにいって購入したいと思います(^O^)/

    次回も楽しみにしています!

    三重県27歳
    | さっちん | 2009/09/27 6:47 PM |