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クボリカワ書房 徳島駅前支店

BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコと+Plus編集長岡本友吟が
少女漫画をそれぞれの目線で語る乙女企画!!
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第6回 坂道のアポロン
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    小玉ユキ 『坂道のアポロン』小学館(月刊flowers)
    あらすじ:1966年初夏、船乗りの父親の仕事の都合で、横須賀から九州の田舎町へ転校してきたナイーブな少年・薫。転校初日、バンカラな男・千太郎との出会い、ジャズとの出会い…薫の高校生活は思わぬ方向へと変化していく。


    「男子は一番楽しいことを共有してるから仲良いよね」

    クボタマサヒコ(以下、クボタ)「本日はBEAT CRUSADERS tour "サイボーグ2009" 徳島公演、本番前に収録しております(笑)今回はユウさんの提案もあり小玉ユキさんの『坂道のアポロン』です」

    岡本友吟(以下、ユウ)「これは『このマンガがすごい!(※1)』2009年版で1位だったので押さえとくか、くらいの気持ちで読んでみたんですが…よくできた漫画ですよね」

    クボタ「そうですね、恋愛だけじゃなくいろんな伏線があって、偏ってないところがドラマっぽいというか」

    ユウ「スタンダードなんですよね。今まであったであろうお話しだし、ベタなんですが…ポイントは1966年という“時代背景”」

    クボタ「あと、九州」

    ユウ「クボタさん、舞台好きですよね(笑)」

    クボタ「だってホラ、方言大事じゃないですか。ちなみに主人公のボン(※2)は横須賀から転校してきたんですよね。九州は…長崎かなぁ? ストーリーの背景にキリスト教あるし。1966年と九州っていう舞台が古典的かつ普遍的な少女漫画を表現している要因ですね」

    ユウ「60年代ってちょうど私前号で『カリモク60(※3)』の取材をしたんですけど、この頃に生まれた食器や家具っていうのは、いわゆる高度経済成長期といわれる時代に、日本のメーカーがとにかく世界に通用する“シンプルで品質も良いもの”を作っていて、まさに普遍的なんです。文化や流行なんかも今から見ると単純にオシャレなんですよね」

    クボタ「そうだよね、使ってる言葉とかも違うし」

    ユウ「ああ、ボンの『キミ』とか『〜じゃないか』とかね。ボンの眼鏡も好きです」

    クボタ「これヒダカ(※4)眼鏡ですよね? 下にフチがない、おじいちゃん眼鏡」

    ユウ「ほんとだ(笑)」

    クボタ「これ少女漫画だけど主人公男の子なんだよね。でもフラワーコミックスって基本女性が読む数の方が多いはずだし、女性が男性の話を読むって特殊ですね」

    ユウ「これが少年漫画雑誌に載ってても違和感ない気がしますね。最近は男も女も関係なく読めるものがほんと多いですよね」

    クボタ「タッチはすごく女性的。絵的には結構好きです」

    ユウ「この古い感じが上手く描けてますよね。私、女だから解らないですけど男の友情ってこんな感じですか?」

    クボタ「かなりクサイけど(笑)。あ、でも何歳だっけ、主人公。高校一年生か…確かに中高生の時って女の子と一緒にいるよりは男子とつるんでバンドやったりしてたな。まあ状況は近いかもしれないですね」

    ユウ「クボタさんのバンド経験っていつからなんですか?」

    クボタ「中学3年生くらいかな。ガーッとやりだしたのは中学卒業して高校に入る前の春休みに、友達みんなで勢いにのって」

    ユウ「その時のパートは?」

    クボタ「ギターです。で、地元の友達の家の離れにドラムセットとか全部置いてみんなで練習して、この漫画みたいな地下室じゃないけど。こんな都合のいいスタジオはない(笑)」

    ユウ「クボタさんの練習してた所って空き家とかですか?」

    クボタ「その家が建築屋で、倉庫っていうか別に地下室みたいなのがあって。でも周りは普通に住宅だし、裏はお寺だし。で、案の定お寺から苦情がきて最終的にお巡りさんも出てきて、お墓の中を逃げた(笑)」

    ユウ「わあ〜良い思い出〜(笑)」

    クボタ「男子は一番楽しいことを共有してるから仲良いよね。で、男だけど嫉妬とかさ」

    ユウ「あるんですか!?」

    クボタ「あるある。中学一緒でも高校から学校別々になってくるじゃない? それでも放課後、バンド練習の時はちゃんと集まって。でも、それがだんだんそれぞれの高校で知り合った友達と組み始めて『え、なんだよそれ』みたいな(笑)。それこそこの『坂道〜』でもさ、文化祭で新しい男の子でてくるじゃない」

    ユウ「千太郎(※5)に文化祭で自分のバンドを手伝ってくれと誘ってきた松岡君(※6)ですね。ボンがそれを嫉妬しちゃうんですよね」

    クボタ「ああいう感じのはあったりしました。漫画は極端に脚色してあるけど」

    ユウ「分かりやすいですよね。二人のキャラも立ってるし」

    クボタ「この作者女性ですよね? この青春時代の男子の気持ちをなんでわかるんだろうな〜」

    ユウ「そう思いますか? 男性から見て」

    クボタ「千もさ、腕っ節は強いけど結構恋に対して弱気じゃないですか」

    ユウ「そう、あれびっくりしましたよ。キャラ違うーって」

    クボタ「ね、ボンは涙もろいし、りっちゃん(※7)の事で泣くより千(※5)のことでよく泣くじゃないですか。まぁボンにとって初めての友達だからなんだろうね」

    ユウ「お互いそうなんですよね、千にとっても初めての友達」

    クボタ「あんまり他人に心を許してこなかったんだよね、いままでは」

    ユウ「2巻でね、二人が喧嘩したときに楽器を弾いてるうちに仲直りしちゃうでしょ?」

    クボタ「はずかしいくらいのね(笑)」

    ユウ「これどうですか? ミュージシャン的に(笑)」

    クボタ「こんな美しいのはないなー」

    ユウ「いやいや、何かあるんじゃないですか!?(笑)」

    クボタ「あったかなぁ。でもまぁ結局楽しいから、それで集まってるからね。二人もボンはク
    ラッシック、千はジャズで、ジャンルの違いはあれど一緒にやるってことで打ち解け合ったわけで。音楽がなかったらここまで繋がってないかもしれないね」

    ユウ「そう。これは特筆すべきところですね、この漫画において。音楽が重要な役割を果たしてますよね、しかもジャズ。クボタさんの最初のバンドはジャンルはバラバラだったりしなかったんですか?」

    クボタ「それは一緒でしたよ、みんな。というのもみんなが音楽を聴き始めるきっかけが自分だったんで。中学は音楽聴いてるやつが学校にホントいなくて、一人でラジオだったり海外のテレビで知ったのを聴いてて、それでみんなにカセットテープ渡されて『録って』みたいな」

    ユウ「それってやっぱり一人一人に合わせてつくったりするんですか?」

    クボタ「なんとなくね。元気そうなやつはこれだな、とか」

    ユウ「それでみんなハマっていったわけですね」

    クボタ「そう、そっからだんだん楽器を始めて。そういう面ではジャンルは一緒ですね。今って若者が聴くといえばだいたいロックじゃないですか。いきなりジャズにはまってるって子はなかなかいないと思うし。だからこの60年代はジャズがあってクラシックがあって、そこからビートルズが出てきて目新しくて“なんだこれ”って言ってるのもリアリティあると思う」

    ユウ「この松岡君はロックスターになりたいって言ってバンドしてますよね、マッシュルームカットにして方言じゃなく標準語を使って。で、そのスターになりたい理由がね、『家計を支えたい』なんですよ!!」

    クボタ「熱いよね(笑)」

    ユウ「今だったらそんな理由じゃないじゃないですか」

    クボタ「モテたい、っていうのは今もあるかもしれないけど」

    ユウ「今って何なんでしょうね、音楽をやる理由って…昔は不良がやるもの、みたいなのもあったじゃないですか、世間からはみ出しもの的な。私思うんですけど、今は逆にそういう反社会的な人じゃなくて、普通のサラリーマンもできちゃうくらいの賢い人じゃないとバンドも出来ないんじゃないかなあって」

    クボタ「ああ、逆にね。バカじゃ出来ないと(笑)」

    ユウ「ちゃんと営業もしなきゃいけないし」

    クボタ「本気でやるとね。あと最近の子はみんな真面目だし、良い子ですからね。礼儀正しいし」

    ユウ「業界自体もそんな感じなのかな、“カリスマ性バーン!!”とか“アーティスト様〜!!”みたいなのじゃなくて」

    クボタ「あんまりこうスターというよりは等身大で身近な感じのアーティストが受け入れられてるかもね」

    ユウ「スターの位置が違いますよね、今と昔じゃ」

    クボタ「そう考えると60年代って相当違うよね」

    ユウ「自分の親の青春時代の話ですもんね」

    クボタ「ホント、こういう60年代の話だから説得力があるって事だよね。曰く付きの生い立ちとかも現代の設定で書いてもグッとこないかもしれないけど、ひとつフィルターを通してるからすんなり入ってくる。『ご近所物語(※9)』じゃこういう背景にならないじゃない、絶対に。中流階級のご近所の話っていうか」

    ユウ「『ご近所』は主人公はデザイナーを目指してて、お母さんが漫画家で、隣の幼なじみの男の子はイケメン。どっちかっていうと“憧れ”って感じですね」

    クボタ「それ音楽にも言えるんじゃない? さっき言ってた、昔はスターっていうアイコンに対して憧れた、でもスターが必要なくなって、今はそれこそチャットモンチー(※10)なんて等身大じゃないですか。ルックスも歌詞も含め。そこに共感して、もちろん憧れもあるけど、“自分みたいな女の子が武道館でやってる”っていうところに感動できるんじゃないかな? 同じように漫画も昔みたいにあり得ないシチュエーションで“こんなことあったらいいのに”って妄想で描かれてたのが、どんどんリアリティ優先、友情や仕事、恋愛以外に共感するポイントが拡がってる」

    ユウ「そこがまたリアルですよね」

    クボタ「自分から見てもこういう男子特有の女々しさもちゃんと書かれてると思うし、男子もけっこう涙もろいんだよ、と(笑)」

    ユウ「ナイーブなんですよね。ほんと、少女漫画は進化してますよね」

    クボタ「ね。今はもうこういう掘り下げたもの書かないと時代に合わないんだろうな。『坂道〜』の他にもこのコーナーの候補に挙がってた松田奈緒子さんの『少女漫画(※11)』って漫画も、ベルサイユのばらやガラスの仮面といった名作少女漫画に対して現代のリアリティで返答してるのがすごい新鮮だったんだよね」

    ユウ「この『少女漫画』はこれからの少女漫画を知る上ですごく良い漫画なのでぜひ読んで欲しいですね。ちょこっと紹介しますとベルサイユのばらは、待遇の悪い派遣先で革命を起こす“オスカルの心を持った”34歳派遣社員の話(笑)。少女漫画ってやっぱりいいなあって思わせてくれますよね。オススメです! ところでクボタさん、今回の『坂道〜』で好きなキャラ、もしくは自分に近いのは誰だと思います?」

    クボタ「やっぱり近いと言えばボンになりますね。憧れでいえば淳兄(※12)でしょうか」

    ユウ「淳兄! あれはもてますよね〜。女性キャラはどうですか?」

    クボタ「りっちゃんはほんと絵に描いたような…雰囲気良くて優しくて鈍感で」

    ユウ「その言い方…(笑)まあそんな絵に描いたような女の子もね、傷ついたりしていく過程で人間らしく見えてくるじゃないですか」

    クボタ「対になってますよね、ボンと千、りっちゃんと百合香(※13)さんね。その関係がすごく分かりやすい」

    ユウ「あ! 私最後にこれだけ言わせて欲しい! すごく好きなシーンがあるんですけど、ボンがりっちゃんに『クラッシック置いてるレコード屋さん知らないかな?』って聞いて、実は実家がレコード屋のりっちゃんがそれは告げずに『レコードならうちにあるよ! うちにきたらよか!』って言って、ボンがエロい妄想をするところ!(笑)恥ずかしい脳内妄想に、ここまで書かなくて良いのに…って思ったけど、妄想ってこのぐらい飛躍するよなーって納得できて。これが一番リアルだと思いました(笑)」

    クボタ「まあ高校生で『うち来る?』って言われたら『マジで!?』って思うよね」

    ユウ「マジでってその言い方は昔と違いますけどね(笑)」



    撮影協力:ufotableCafe

    (※1)このマンガがすごい! …宝島社が発行するマンガ紹介ムック。「坂道のアポロン」は2009年版オンナ編で1位。
    (※2)ボン…主人公、西見 薫(にしみ かおる)の愛称。幼い頃から何度も転校を繰り返してきた。伯父の家に居候しているが、年下のいとこと伯母に嫌味を言われる日々を送っており、窮屈な思いをしている。クラシックしか弾いたことがなかったが、千太郎に挑発され、ジャズに挑むようになる。
    (※3)カリモク60…愛知県「刈谷木工有限会社」が1960年代に作ったデザインをそのまま復刻した家具プロダクト。
    (※4)ヒダカ…BEAT CRUSADERSのVo&Gtのヒダカトオル。
    (※5)千太郎…もう一人の主人公、川渕 千太郎(かわぶち せんたろう)。大柄で野蛮な少年。律子とは幼なじみ。妹と弟(叔父の子)が2人ずつおり、面倒見もよくとても慕われている。ジャズのドラム担当。
    (※6)松岡君…松岡 星児(まつおか せいじ)。歌を歌うのが好きで、将来は上京してスターになり、兄弟や両親を楽させるのが夢。千太郎をロックバンドに誘う。
    (※7)りっちゃん…迎 律子(むかえ りつこ)の愛称。薫のクラスのクラス委員。そばかす顔の純粋な女の子。クリスチャン。家はレコード店。
    (※8)ご近所物語…矢沢あい著、集英社りぼんコミックス全7巻。1995年アニメ化。
    (※9)チャットモンチー…徳島県出身のスリーピースガールズバンド。徳島の星☆!!
    (※10)少女漫画…松田奈緒子著、集英社クイーンズコミックス全1巻。少女漫画6作品をサブタイトルに冠している(最終話のみ異なる)。『派遣のオスカル 〜少女漫画に愛をこめて』のタイトルで、2009年8月〜10月までNHK総合で放送。
    (※11)淳兄…淳一(じゅんいち)。律子の隣人で千太郎の憧れの人物。東京の大学に通っている。トランペット奏者。
    (※12)百合香…深堀 百合香(ふかほり ゆりか)。同じ高校の上級生の美少女。薫・千太郎・律子が3人で遊びに行った時、不良に絡まれているところを千太郎に助けられる。
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